不動産の分割(現物分割、代償分割、換価分割、共有)
遺産分割の方法
遺産分割には次の方法があります。
- 現物分割(個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法)
- 代償分割(一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させた上、他の相続人に対する債務を負担させる方法)
- 換価分割(遺産を売却等で換金(換価処分)した後に、売買代金等を分配する方法)
- 共有分割(共同相続人の共有とする)
不動産の場合の分割
不動産も、土地の上に、長男と次男のそれぞれの自宅が建っている場合には、それぞれの自宅にあわせて土地自体を分筆して分割するという方法もあり得ます。不動産会社等の専門家に相談して、土地の有効な活用方法を検討してもらい、自宅等として利用する土地と売却してもよい土地に分けて遺産分割を行う方法もあるでしょう。これらの分割は、1.現物分割の一種です。
土地を物理的に分けるのが難しいときは、相続人のうち誰かが当該不動産を取得して、それ以外の財産をその他の相続人が取得するという分割が通常でしょう。
たとえば、自宅(時価5000万円)と預金5000万円が遺産であったとして、長男が自宅を、次男が預金を取得する、といった方法です。
ここで、預金がない場合には、長男が自宅を取得し、次男に2500万円を代償金として支払う(2.代償分割)という方法や、自宅を5000万円で売ってしまって、その5000万円を長男、次男で分ける(3.換価分割)という方法もあります。
なお、売却するつもりであるのに、いったん長男の単独名義にするために代償分割をしてから分割することには税務上、注意が必要です。そうした場合、長男に5000万円の譲渡収入が発生しますが、長男が次男に支払った2500万円は、長男の譲渡所得の計算上、取得費として控除できず、長男に譲渡所得税の負担が集中するということになりかねません(最高裁平成6年9月13日判決)。
リスクのある「共有分割」
なお、相続人である不動産を共有するという遺産分割(4.共有分割)もあります。たとえば賃料収入のあるアパートについて、長男と次男の共有として、以後の賃料収入を折半したいというような場合に行われることがあります。
ただし、一般論ですが、共有分割はリスクがあります。長男と次男が仲が良くても、そのあとの相続のことを考えると、それぞれの家族が未来永劫円満な関係を持つとは限りませんし、共有のアパートの収入があるから管理方法などをめぐってもめてしまうということもあり得るでしょう。なるべくなら、共有分割は避けるべきです。
家庭裁判所の遺産分割実務でも、まずは1.現物分割ができないかを検討し、それが無理なら2.代償分割を考え、それも難しければ3.換価分割とする扱いとしており、4.共有分割は最後の手段とされています。
本間合同法律事務所 弁護士 坂田